今回の関内練習ではいくつか兵器を試したのですが、その中で私がお気に入りなのは鞭杵です。
これは羊飼いが持っていたという杖で、羊や犬を誘導したり、羊を狙う獣や盗賊が出た時に追い払う物として発展したのだと言います。
私は中学生の時にアフリカで羊飼いをしている夢を見て以来羊を飼って暮らす生活にあこがれていたので、鞭杵も好きなのです。
長さとしては日本の杖術の物に似ているのですが、それよりもずっと細い物で、両手で持てば棍、片手で刀剣の応用でも使えるという特色があります。
私は長いこと、古武術の六尺棒などいろいろな棒杖の兵器を練習してきたのですが、いつも身体と兵器が馴染まずに動きがこんがらがってしまってどうにも不得手でした。
それなりに得心が行くようになったのは蔡李佛を学んでからです。
棍は拳術の母、刀は拳術の父、などと言うように蔡李佛も元々は兵器の用法を徒手に応用した物なので、そのシステムに則って練習を積めば当然身体の遣いと兵器がこんがらがるというようなことはありません。
兵器も徒手も動きはまったく同じです。
今回のブロック&カウンタルの応用対打でも、自縄自縛に陥ることなく自由に動ける。
少林武術は心を自由にするための物なのでこれはその効果が十分に感じられるところです。
手を空いての腕に絡めて戦う用法を橋法と言いますが、兵器の扱いはこの橋法とまったく同じです。
多少複雑に見える様な動きでも、複雑にやろうとしている訳ではありません。
もしそうしようとしているのならその段階で本質を外れている。
ただ出来ることを素直にやった結果がたまたま端から見るとややこし気に見えると言うだけで。
中国武術に独特のあの橋法、片手持ちの兵器でも両手持ちの兵器ででも同じように行えるものです。
思うに、自然な反応で道具を扱うには神経の濁りのない反応が必要になる部分があるのではないかと思われます。
身体の力量を挙げるには易筋行を用いますが、神経の反応には洗髄行というカテゴリーの気功が有用だと思います。
この二つは少林武術の根幹をなすものであり、これらが出来れば特に技術は要らないとされているものです。
今回の練習からいまの学生さんが一人次の段階に進めることになり、兵器と武気功の段階に入ることになりました。
この易筋と洗髄をしっかりと身体に施して功を挙げていっていただきたいものです。